
古代中国で生まれた陰陽説という思想には、「天地人三才」という考え方があります。
算命学の思想・哲学・占術は、陰陽説・五行説から成り立っていて、当然、この考え方も含まれている訳ですが、算命学の原典(原典算命学大系)には、「天地人三歳」と記載されています。
という事で、今回は、天地人「三才」か「三歳」かをテーマに語りたいと思います。
さて、このテーマを考察する切っ掛けは、算命学基礎理論ブートキャンプの受講者の次の質問でした。
レジュメに「天地人三歳」の理とあるけれど、これは「三才」の誤字ではないのか?
この記事の筆者である私(さる山隊長)は、四書五経を始め、中国の古典を幾らか読んでいるのですが、「天地人」という概念は出て来ても「三才」、或いは、「三歳」という言葉を見た記憶がないので、良い機会なので調べてみた訳です。
漢字(文字)の意味からの考察
漢字は表意文字なので、三才か三歳かを考察するに当たって、「才」、「歳」、「材」という文字の持つ意味から考察してみましょう。
才
現代中国語辞典(光生館)では、
「①能力、②ある類いの人を誹謗・中傷していう(愚才)、③時点を示す語、又は、構造について、その時点になってようやく動作・作用が実現するに至る事を表す、④ある状況の下でようやく動作・作用が実現をみる事を表す、⑤特定の主体について、その主体が備えている目される条件によりようやく動作・作用・状態が実現するに至る事を表す、⑥事物の数量、又は、動作の分量が示された領にようやく達する事を表す。⑦両方の動作が緊切して起こる事を指す、⑧~こそ、~に限って、⑨全て、⑩人の姓」
と解説されています。
一方、広辞苑第五版(岩波書店)では、
「(1)生れつきの資質・能力。知恵のはたらき。ざえ、(2)船の積み荷体積・容積の単位、(3)年齢の「歳」の略字」
と解説されています。
歳
現代中国語辞典(光生館)では、
「①年齢を計算する単位、②年、歳月、③その年の収穫」
と解説されています。
一方、広辞苑第五版(岩波書店)では、
「(1)時を測るのに用いる単位、(2)惑星がその軌道を1周する時間、(3)年齢。積み重ねた年月。よわい、(4)穀物、特に稲。また、そのみのり、(5)季節。時候」
と解説されています。
材
現代中国語辞典(光生館)では、
「①材木、②資料、③資質・能力・才能、④棺、⑤役に立つ人」
と解説されています。
一方、広辞苑第五版(岩波書店)では、
「(1)建築などに用いる木。また、原料となるもの、(2)用いて役に立つべきもの、(3)役に立つ能力。また、それを有する人」
と解説されています。
三 才
現代中国語辞典(光生館)では、
「天・地・人」
と解説されています。
一方、広辞苑第五版(岩波書店)では、
「(1)天と地と人。三元。三儀。三極、(2)宇宙間の万物、(3)観相上、額(天)・鼻(人)・顎(地)の称」
と解説されています。
三 歳
現代中国語辞典(光生館)では、記載はありません。
一方、広辞苑第五版(岩波書店)では、
「(1)3ねん、(2)3さい」
と解説されています。
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以上の通り、漢字(文字)の意味からは、「三才」の方が正しかろうと思います。

出典からの考察
次は、古代中国の文献、及び、算命学の原典を紐解いてみましょう。
易経(繋辞下伝) えききょう(けいじかでん)
易之為書也,廣大悉備,有天道焉,有人道焉,有地道焉。兼三材而兩之,故六六者,非它也,三材之道也
――――――
易の書たるや、広大にしてことごとく備わり、天道あり、人道あり、地道あり。三材を兼ねてこれを両にす。ゆえに六六なる者は、他に非ず、三材の道なり。
――――――
『易経』という書は、広大で全てが備わっている。そこには、天の道があり、人の道があり、地の道がある。天・地・人(三材)を総合して、それらを二つに分けて用いる。故に、六十四卦は他のものではなく、天・地・人(三材)の道を表している。
*『易経』(周易)は、古代中国の占いの書で、儒教の基本書と言われる五経の一つ。紀元前八世紀頃に原型が出来たと伝わっている。
易経(説卦伝) えききょう(せっかでん)
昔者聖人之作也,將以順性命之理,是以立天之道曰陰與陽,立地之道曰柔與剛,立人之道曰仁與義。兼三才而兩之
――――――
昔聖人の作るや、まさに性命の理を以て順わんとす。これを以て天の道を立てて曰く「陰陽」、地の道を立てて曰く「柔剛」、人の道を立てて曰く「仁義」。三才を兼ねてこれを両にす。
――――――
昔、聖人が『易経』を作ったのは、性と命(本質と運命)の理に従おうとしたからである。故に、天の道として「陰と陽」を立て、地の道として「柔と剛」を立て、人の道として「仁と義」を立てた。三才(天・地・人)を合わせて、それらを両(陰陽)に分けた。
三字経 さんじきょう
三才者天地人
――――――
三才なるもの天地人
――――――
三才は天地人である。
*『三字経』は、文字や文化、道徳、歴史等を学習する為の子供向けの教科書で、南宋の王応麟(1223~1296年)が著したと言われているが、本当のところは分からない。
淮南子(天文訓) えなんじ(てんもんくん)
天墬未形,馮馮翼翼,洞洞灟灟,故曰太昭。道始生虛廓,虛廓生宇宙,宇宙生氣。氣有涯垠,清陽者薄靡而為天,重濁者凝滯而為地。
――――――
天墬(てんち)未だ形無く、馮馮翼翼(ひょうひょうよくよく)、洞洞灟灟(とうとうしょくしょく)、故に太昭という。道始めて虚廓を生じ、虚廓、宇宙を生じ、宇宙、気を生ず。気に涯垠有り、清陽なる者は薄靡して天と為り、重濁なる者は凝滯して地と為る。
――――――
天地はまだ形がなく、混沌とした状態であった。故に、太昭という。道は最初に虚廓(無限の広がり)を生じ、虚廓は宇宙を生じ、宇宙は気を生じた。気には限りがあり、清陽なるものは薄く拡がって天となり、重濁なるものは留まり、固まって地となった。
*『淮南子』は、前漢の武帝の頃(B.C.140年頃)、淮南王・劉安が編纂した書物。道家思想を中心にしつつも、様々な思想により記載された為、雑家の書に分類されている。人間万事塞翁が馬の逸話が収録されている。
孟子(公孫丑下) こうそんちゅうげ
孟子曰,天時不如地利,地利不如人和。
――――――
孟子曰く、天時は地利に如かず、地利は人和に如かず。
――――――
孟子は言った。天の時は地の利に及ばず、地の利は人の和に及ばない。
*『孟子』は、中国の戦国時代の儒学者である孟子の言行を記録した書。
黄帝内経素問(宝命全形論) こうていだいけいそもん(ほうめいぜんけいろん)
人以天地之氣生,四時之法成。
――――――
人は天地の気を以て生じ、四時の法より成る。
――――――
人は天地の気から生まれ、四季の巡り(自然の循環)によって成り立っている。尚、四時とは、春(生)夏(長)秋(収)冬(蔵)を指す。
*『黄帝内経』は、前漢の時代に編纂された現存する中国最古の医学書。
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私が調べた限りでは、古代中国の文献において、「三才」という言葉が出て来るのは、『易経』(周易)と『三字経』のみでした。まぁ全てを調べ切れている訳はないから、きっと漏れもあるでしょうが、しかし、有名どころには「三才」という記載はないと思います。
尚、『淮南子』、『孟子』、『黄帝内経』には「三才」という記載はありませんが、この世界は天・地・人という三つの世界から成り立っているという思想が見て取れる事は疑いありません。
何れにしろ、ここでも「三才」(三材)は出て来るのですが、「三歳」の記載はありません。
原典算命学大系

「天地人三歳」、「天地人三歳理論」、「天地人三歳」の理という様に、この書籍では、「才」ではなく、「歳」が用いられています。
以下の文章は、『原典算命学大系』の引用ではなく、その理解の下に私が構成した文章です。
人間は、まず「肉体」が生まれる。人間の肉体は、空の器の様なものである。そして、空の器には引力が宿っている。
その器の引力により、一年目には天の気が、二年目には地の気が、三年目には人の気が肉体内に入り込み、それらが融合し、「霊魂」という新しい気が生まれる。
それと同時に、霊魂と肉体の間にあって、それらのバランスを調整する機関である「心」が生まれ、気・心・体(霊魂・心・肉体)(天・地・人)の三歳が揃い、真の人間が完成する。
ここから、意識・記憶を持つ様になり、人間の運命が本格的に始まる。日本語では、この状態を「物心が付く」と表現している。

以上が、人間の成り立ちに関する算命学の考えなのですが、この様に、1年・2年・3年と時間の経過を主眼に考えるのであれば、「歳」でも構わない気がします。
しかし、作用・働き・資料(原料)という視点からは、やはり「材」が望ましい様に思います。
算命学では、或いは、高尾義政算命学第十三代宗家は、何故「三歳」という文字を採用したのか、伺ってみたいところですが、それはもう叶わないでしょう。
* 原典算命学大系(全11巻)は、1980~81(昭和55~56)年に発行された書籍で、算命学の基礎理論、占技について記載されている。
さる命学教室の結論
算命学は、運命学ですから、人間の運命を基準に様々な事象を考察しています。算命学は、間違いなく陰陽説・五行説から成り立っていますが、そもそも、陰陽説・五行説といっても、それらには色々な説・考え方があります。これは、算命学的な陰陽説・五行説も存在するという事です。
であれば、算命学では「天地人三歳」を使っても問題ない様にも思います。しかし、それだと他の一般的な陰陽五行の理解と齟齬が生じる事になります。
又、人間の組成のみならず、この宇宙(空間+時間)の成り立ちをも表すというのであれば、やはり「天地人三才」の方が望ましかろうと思います。
以上の事から、さる命学教室では、「天地人三才」と、「才」の字を用いる様にします。
終わりに
今回の記事は、非常に専門的なもので、分かり辛い部分もあったかも知れませんが、こういう細かな点にまで気を配り、大本を辿って正確な理解をしようとするのが、さる山さる子の算命学教室、略して「さる命学教室」の特徴であり、教育方針です。
日本一の算命学教室を「自認する」さる命学教室は、学びを求める者に対し、常に門を開いています。Wスクールも歓迎していますし、PCやタブレットさえあれば、オンラインで世界のどこからでも受講する事が出来ます。
初学者の方も、既にどこかで算命学を学んでおられる方も、プロの占者や講師の方も、四柱推命や気学、易、奇門遁甲、紫微斗数等、他の陰陽五行系統の占いを学んでいる人も、「学びたい」という意思さえあれば、どなたでも歓迎します。
さる命学教室には、非常にレベルの高い講座もあれば、アマチュアの上級レベルの比較的簡単な講座も、あるテーマに絞った特別講座もありますから、さる山の「算命学」、「陰陽五行」に興味があるという方は、是非、一度体験をして頂きたいと思います。
皆様にお会い出来る日を、さる山のスタッフ一同、楽しみにしています。
(さる山隊長)
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